【機械安全の基本】 ISO13849 を現場目線でわかりやすく解説|PL・PLr・カテゴリとは ?

製造現場や設備設計の場面でよく耳にする 「 ISO13849 」 。
安全回路や非常停止、インターロック、安全扉、ライトカーテンなどを検討するときに出てくる機械安全の重要な規格ですが、
実際の現場では、
「PLって何?」
「PLrとPLは何が違うの?」
「カテゴリB、1、2、3、4ってどう考えればいいの?」
「結局、どこまで安全対策をすればよいの?」
と感じる方も多いのではないでしょうか。
近年、製造現場では自動化設備やロボット設備の導入が進み、人と機械が近い距離で作業する場面が増えています。そのため、設備の安全対策も「とりあえず非常停止を付ける」「安全スイッチを設置する」といった考え方だけでは不十分になってきています。
ISO13849は、設計者や安全担当者だけでなく、設備を導入する現場担当者、保全担当者、生産技術担当者にとっても理解しておきたい基本知識です。
この記事では、ISO13849の基本を現場目線でわかりやすく解説しながら、PL・PLr・カテゴリの考え方を整理していきます。
目次[非表示]
- 1.ISO13849 とは?
- 2.なぜ ISO13849 が必要なのか?
- 3.PL とは? 安全性能を表すレベル
- 4.PLr とは? 必要な安全レベル
- 5.PLr はどうやって決めるのか?
- 5.1.① けがのひどさ:S
- 5.2.② 危険にさらされる頻度:F
- 5.3.③ 危険を回避できる可能性:P
- 6.PLr 決定の例
- 7.カテゴリとは?安全回路の構造を表すもの
- 8.カテゴリBから4の違いを実務目線で整理する
- 9.PL はカテゴリだけで決まるわけではない
- 10.MTTFd ・ DCavg ・ CCFとは?
- 10.1.MTTFd (Mean Time To Dangerous Failure)
- 10.2.DCavg (Diagnostic Coverage average)
- 10.3.CCF (Common Cause Failure)
- 11.現場でよくある誤解
- 11.1.誤解1 : 非常停止を付ければ安全
- 11.2.誤解2 : 安全リレーを使えば PLd になる
- 11.3.誤解3 : カテゴリ4なら必ず最高レベル
- 12.ISO13849 対応で現場が意識すべきポイント
- 13.まとめ
ISO13849 とは?
ISO13849 は、機械の安全関連制御システムに関する国際規格です。
簡単に言うと、
機械を安全に止める・危険な動きを防ぐための制御システムが、どれくらい信頼できるかを評価するための規格 です。
たとえば、以下のような安全機能が対象になります。
- 非常停止スイッチ
- セーフティドアスイッチ
- セーフティライトカーテン
- 両手操作スイッチ
- 安全リレー
- 安全PLC
- サーボの安全停止機構
など。 ──つまりは、危険な機械動作に対して「人を守るための制御」が ISO13849 の評価対象になります。
なぜ ISO13849 が必要なのか?
現場では、安全対策として非常停止や安全扉を設置することがあります。 しかし、単に部品を付ければ安全というわけではありません。
たとえば、安全扉スイッチが故障しているのに機械が動いてしまったら危険です。
非常停止ボタンを押しても、回路の一部が故障して止まらなければ意味がありません。
そこでISO13849では、安全機能に対して、
- どのくらい危険な作業なのか
- どのレベルの安全性が必要なのか
- 適切な機器が選定されているのか
- その機器構成で安全機能が成立しているのか
を 確認します。
PL とは? 安全性能を表すレベル
ISO13849 で重要なキーワードが PL です。
PLとは Performance Level の略で、安全関連制御システムの性能レベルを表します。
PL は、 PLa から PLe までの5段階で表されます。
PLa から PLe に向かうほど、安全性能は高くなります。
パフォーマンスレベル PL | 危険度の目安 | 生産設備での具体的な適用例 |
|---|---|---|
PL e | 死亡・重大な後遺障害 逃げる隙がない場所 |
|
PL d | 重傷 (骨折・切断など) 頻繁に近づく場所 |
|
PL c | 軽傷 (打撲・擦り傷など) またはたまにしか近づかない場所 |
|
PL b | 軽傷で、かつ危険に |
|
PL a | ほとんど危険がない場所 |
|
PLaは安全性能が最も低く、PLeは最も高いレベルです。
ただし、PLは「高ければ高いほどよい」というものではありません。
設備の危険度に応じて、必要なPLを適切に決めることが重要です。
現場でよく出てくるのは、PLd や PLe です。
たとえば、人体に重大な危害を与える可能性がある設備では、PLd以上が求められることも多くあります。
PLr とは? 必要な安全レベル
PLと似た言葉に PLr があります。
PLrとは Required Performance Level の略で、その安全機能に必要とされるPL のことです。
つまり
- PLr : 必要な安全性能
- PL : 実際に設計した安全回路の性能
という関係です。
たとえば、安全扉インターロックに対してリスクアセスメントを行った結果、PLr = d が必要と判断されたとします。
その場合、実際に設計した安全回路は PLd以上 を満たす必要があります。
逆に、実際の回路がPLcしかない場合は、必要性能を満たしていないことになります。
PLr はどうやって決めるのか?
PLrは、リスクアセスメントによって決定します。
ISO13849では、主に以下の3つの要素を使って判断します。
① けがのひどさ:S
危険が発生したとき、どの程度のけがになるかを見ます。
- S1 : 軽傷
- S2 : 重症または死亡の可能性
たとえば、軽い打撲程度ならS1、
巻き込まれや切断、死亡の可能性がある場合はS2です。
② 危険にさらされる頻度:F
作業者がどれくらい危険区域に近づくかを見ます。
- F1 : まれ、または短時間
- F2 : 頻繁、または長時間
段取り替えや清掃で毎日危険区域に入る場合は、F2になりやすいです。
③ 危険を回避できる可能性:P
危険が発生したとき、作業者が避けられるかを見ます。
- P1 : 回避可能
- P2 : ほとんど回避不可能
機械の動きが遅く、見て避けられる場合はP1、
高速動作や予測しにくい動きの場合はP2になります。
PLr 決定の例
たとえば、プレス機の危険区域に手を入れる可能性がある場合を考えます。
- けがのひどさ:S2
- 頻度:F2
- 回避可能性:P2
この場合、非常にリスクが高いため、PLrは PLe になる可能性があります。
一方で、軽微なけがで、危険区域に近づく頻度も少なく、回避も可能な場合は、PLrは低くなります。
重要なのは、「なんとなくPLdにする」のではなく、リスクに応じて必要なPLrを決めることです。
カテゴリとは?安全回路の構造を表すもの
ISO13849 では、PLを決める要素のひとつとしてカテゴリがあります。
カテゴリは、安全回路の構造や故障への強さを表します。
カテゴリは B、1、2、3、4の5段階 に分類されます。
カテゴリ | 要点 |
B | 基本的な安全構造 |
1 | 信頼性の高い部品を使用 |
2 | 定期的にチェックする |
3 | 一部故障しても安全機能を維持しやすい |
4 | 故障があっても安全機能を維持し、故障を検出しやすい |
カテゴリBから4の違いを実務目線で整理する
カテゴリB : 基本安全原則を用いる
- 単一チャンネル構成
- 故障の検出機能なし

カテゴリ1 : 基本安全原則に加え十分吟味された部品を使用
- 単一チャンネル構成
- 十分吟味された部品 (Well-tried component)

カテゴリ2 : 定期的なテストを実施
- 単一チャンネル構成
- 安全機能を適切な感覚でテスト
- 故障検知時は、可能ならば安全状態へ移行

カテゴリ3 : 冗長(二重化)構成+一部診断
- 2チャンネル冗長構成
- 単一故障で安全機能を損なわない
- 診断機能(任意)により故障の累積を防止し、安全機能を損なう可能性を低減

カテゴリ4 : 冗長(二重化)構成+高い診断機能
- 2チャンネル冗長構成
- 単一故障で安全機能を失わない
- 高い診断性能で故障を検出(累積を防止、または制御)


PL はカテゴリだけで決まるわけではない
ここで注意したいのは、 PL はカテゴリだけで決まらない という点です。
PL は主に以下の要素で決まります。
- カテゴリ
- MTTFd : 部品の平均危険側故障時間
- DCavg : 診断機関
- CCF : 共通原因故障への対策
つまり、カテゴリ3だから必ずPLd、カテゴリ4だから必ずPLeというわけではありません。
実際には、使用する部品の信頼性や診断機能、配線方法、故障検出の仕組みなどを含めて評価します。
MTTFd ・ DCavg ・ CCFとは?
MTTFd (Mean Time To Dangerous Failure)
MTTFdは、部品やシステムが危険側に故障するまでの平均時間を表します。
数値が大きいほど、危険側故障が起きにくい部品・構成と考えます。
DCavg (Diagnostic Coverage average)
DCavgは、危険側故障をどれくらい検出できるかを表します。
たとえば、安全リレーや安全コントローラによって、入力の短絡、断線、接点溶着などを監視できる場合、診断範囲が高くなります。
CCF (Common Cause Failure)
二重化していても、同じ原因で両方が同時に故障してしまうと、安全機能が失われる可能性があります。
そのため、たとえば以下のような対策が重要です。
- 2系統の配線を同じケーブルや同じ経路にまとめすぎない
- 温度、振動、水分、粉じんなど、同じ環境ストレスを受けにくくする
- 過電圧、サージ、ノイズ対策を行う
- 設計ミス、配線ミス、設定ミスを防ぐ
つまり、 MTTFdは「壊れにくさ」、 DCavgは「故障を見つける力」、 CCFは「同じ原因で同時に壊れないための対策」
を表す指標です。
現場でよくある誤解
誤解1 : 非常停止を付ければ安全
非常停止は重要ですが、それだけでリスクがなくなるわけではありません。
非常停止は、あくまで異常時に人が操作して止めるための手段です。
通常作業中の危険を低減するには、ガード、インターロック、安全センサ、ライトカーテンなど、リスクに応じた安全方策が必要です。
誤解2 : 安全リレーを使えば PLd になる
安全リレーを使っていても、必ずPL dになるわけではありません。
PLは、安全リレー単体ではなく、センサ、入力回路、ロジック、出力回路、アクチュエータ、配線、診断内容などを含めた安全機能全体で評価します。
そのため、同じ安全リレーを使っていても、回路構成や診断の有無によってPLは変わります。
誤解3 : カテゴリ4なら必ず最高レベル
カテゴリ4は高い安全構造ですが、それだけで最高レベルと判断することはできません。
PL評価には、カテゴリだけでなく、MTTFd、DCavg、CCFなども関係します。
そのため、カテゴリだけで判断すると、要求PLを満たしていない可能性があります。
ISO13849 対応で現場が意識すべきポイント
現場でISO13849に対応する際は、以下の流れで考えると整理しやすくなります。
- 機械の危険源を洗い出す
- リスクアセスメントを行う
- 必要なPLrを決める
- 安全機能を設計する
- 実際のPLを計算・確認する
- PLがPLrを満たしているか確認する
- 妥当性確認を行う
この流れを押さえることで、「どの安全対策が、どのリスクに対して必要なのか」 が明確になります。
また、部品を選定するだけでなく、センサ、制御部、出力機器、配線、診断、使用条件まで含めて、安全機能全体で確認することが重要です。ISO 13849では、 “ 安全部品を使っているか ” ではなく、 “ 必要な安全機能が要求PLを満たしているか ” を確認することがポイントです。
まとめ
ISO 13849 は、機械の安全関連制御システムの性能を評価するための重要な規格です。
ポイントを整理すると、以下のようになります。
- PL は、実際の安全性能レベル
- PLr は、リスクに応じて必要とされる安全性能レベル
- カテゴリは、安全回路の構造を表す
- PLはカテゴリだけでなく、MTTFd・DCavg・CCFも含めて決まる
- PLはカテゴリだけでなく、MTTFd・DCavg・CCFも含めて決まる
ISO13849 は一見難しく見えますが、基本は 「リスクに見合った安全性能を確保する」 ことです。
現場では、規格の要求事項を理解したうえで、
「どの危険に対して、どの安全機能で、どのレベルまでリスクを下げるのか」
を具体的に考えることが大切です。
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