工場の人手不足に効果的な対策とは。デジタル技術の導入と労働力改善で採用率と定着率の向上を

人手不足は、現代の工場運営に付きまとう深刻な問題となっています。
経済産業省の『2025年版ものづくり白書』では、製造業の就業者数は2002年の1,202万人から2024年には1,046万人と、150万人以上減少しており慢性的な人手不足の状態です。
▼就業者数の推移

画像引用元:経済産業省『2025年版ものづくり白書』
また、製造業の従業員数における過不足状況を示す従業員数過不足DIが2024年第4四半期にマイナス18.2となっており、依然として人手不足が続いていることが示されています。
工場の人手不足を解消するには、これらの現状を深く理解し、適切な対策を講じることが求められます。
本記事では工場の人手不足の原因を分析して、効果的な3つの対策と成功事例を紹介します。
出典:経済産業省『2025年版ものづくり白書』
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工場が人手不足になる原因
工場の人手不足が発生する主な原因は、労働人口の低下、製造業における長時間労働の傾向、教育制度の不備などが挙げられます。
①製造業における長時間労働の傾向
製造業は長時間労働を余儀なくされるという固定観念は、未だに一部で残っています。
厚生労働省の『人口構造、労働時間等について』によれば、製造業の年間総実労働時間数は調査平均の1,718時間に対して1,912時間と、一面においては否定できません。
製造業の年間総実労働時間数は平成以降は減少傾向にあり、これらのイメージは必ずしも実際の工場の姿を反映しているわけではありません。労働環境の改善による製造業に対するイメージの革新が、人手不足の解消に欠かせません。
出典:厚生労働省『人口構造、労働時間等について』
②若年層における入職者の減少
製造業の若年就業者数は2012年まで減少傾向が続き、それ以降は横ばい状態が続いています。一方で、新規学卒者の製造業への入職割合は2002年以降低下傾向にあり、若い世代の製造業離れが深刻化しています。
▼若年就業者数の推移

画像引用元:経済産業省『2025年版ものづくり白書』
構造的な人口減少により、工場で働く人材の確保がますます困難になっているのが現状です。
出典:経済産業省『2025年版ものづくり白書』
③人材育成や教育環境の問題
製造業においては、技能伝承を含む教育制度に課題を感じている事業所が少なくありません。
能力開発や人材育成に関する問題があるとした製造業の事業所は、2023年時点で85.3%と全産業の平均である79.8%より高い割合を示しています。
▼能力開発や人材育成に関する問題がある事業所の割合の推移

画像引用元:経済産業省『2025年版ものづくり白書』
ベテラン社員の退職が進む一方で、後進の育成に十分な時間を割ける人材が不足していることも、人手不足を加速させる一因です。
出典:経済産業省『2025年版ものづくり白書』
④デジタル化の遅れ
工場におけるデジタル化の遅れも、人手不足の原因のひとつです。
デジタル化が遅れる要因として、レガシーシステムや初期コストの問題、人手不足などが挙げられます。
▼デジタル化が遅れる要因
- レガシーシステムを新しいシステムに組み込むことが困難である
- 高額な初期投資コストへの懸念がある
- デジタル人材が慢性的に不足している など
このデジタル化の遅れにより、手作業による非効率な業務が継続され、従業員への過度な作業負荷が発生しています。
工場の人手不足を解消する方法
2024年度の生産工程従事者における有効求人倍率は全職業の平均1.25を上回る1.59と改善の兆しは見えません。人手不足の継続は企業の競争力低下や事業縮小を招く重大な問題です。
しかし、適切な対策を講じることで解消が可能です。
労働条件や作業環境の改善
労働条件の改善と作業環境の整備は、人手不足の解消に欠かせない重要な要素です。
▼労働条件や作業環境の改善策
改善対象 | 改善策 |
労働条件 |
|
作業環境 |
|
これらの改善により、従業員の満足度が向上して離職率の低下と新規採用の促進につながります。
職場環境改善のアピールと採用活動の見直し
デジタル化や自動化による職場環境の改善を積極的にアピールすることで、製造業に対するマイナスイメージを払拭して優秀な人材の確保につながります。
採用活動の改善策の例としては、以下が挙げられます。
▼採用活用における具体的な改善策の例
改善策 | 具体的な取り組み |
採用対象の拡大 |
|
人材派遣や業務委託の利用 |
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SNSやWebサイトからの発信 |
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現代の工場は従来のイメージとは大きく異なる職場環境を提供していることを、効果的に伝えることが、より多くの人材を惹きつけるカギとなります。
人材育成制度の整備
製造業における人手不足対策として、体系的な人材育成制度の整備が有効です。
まず育成すべき人材像とキャリアパスを明確化し、個々の成長段階に応じた学習プログラムを構築することが重要です。特に、ベテランの暗黙知を動画マニュアルや教育ツールで可視化・標準化し、指導者のスキル向上研修と併せて実施することで、教育の質を均一化できます。
継続的なスキルアップ機会の提供と適切な評価制度により、従業員のモチベーション向上を図り、人材の定着率改善と生産性向上の好循環を生み出すことが可能です。
デジタル技術による業務プロセスの効率化・標準化
工場のデジタル化は、業務プロセスの効率化・標準化を実現して人手不足への有効な対処手段となります。
▼業務プロセスの効率化・標準化の具体的手段
- 紙媒体を用いた作業のデジタル帳票化(作業指示書、点検表、在庫管理表)
- IoT機器による製造ライン稼働状況のリアルタイム監視
- 産業用ロボットの導入を含む製造システムの刷新
これらの取り組みにより、作業時間の短縮・品質の安定化などを実現して生産性向上につながります。
工場の人手不足対応に成功した事例
オムロンの綾部工場と草津工場では、モバイルロボット(AMR)の導入により人手不足に効果的に対応しています。
▼導入前の課題
同工場では約4,700品目もの製品を扱っており、特に20台以下の品目が80%以上を占める超多品種少量生産が特徴です。毎日約300回ものオーダー搬送が発生する上、部品が1個だけ入っている箱を人間が運ぶことがあり、非効率な面がありました。
▼導入後の効果
モバイルロボットの導入により、これまで人が運んでいた作業の75%をロボットが担当するようになったため、大幅な省人化が実現しています。また、搬送のリードタイムも平均で80%短縮されています。
これにより、従業員が新たなスキルや技能を習得できる環境を実現しています。
この事例について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
まとめ
この記事では、工場における人手不足について以下の内容を解説しました。
- 工場が人手不足になる原因
- 工場の人手不足を解消する対策
- 採用活動の見直しでイメージの向上
- 工場の人手不足対応に成功した事例
工場の人手不足は、労働人口の減少や製造業への偏見、教育制度の問題など複数の要因が重なって発生しています。しかし、採用活動の見直しや職場環境の改善、DXの推進、多能工の育成などの対策を組み合わせることで、効果的な解決が可能です。
人手不足の根本的な解決には、専門的な知識と経験が必要です。
『株式会社エフ・エー・アネックス』では、工場の人手不足解消に向けた総合的なサポートを提供しています。
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