失敗しない品質管理!工場で押さえる品質管理の基本と具体的な施策ポイント

工場経営や製造現場の品質管理は、顧客満足度を高めるうえで重要な工程です。再検査・返品・リコールなどのコスト発生や、企業信用失墜のリスクを抑えるため、品質管理は“計画的かつ体系的”に運用されなければなりません。
本記事では、品質管理の概要や基本手法を解説します。加えて、品質管理で失敗しないための取り組みや事例も記載しました。製造業で品質管理・生産管理を担当する方は、ぜひご活用ください。
目次[非表示]
- 1.品質管理とは
- 2.工場で押さえる品質管理の基本
- 3.失敗しない品質管理の具体的施策とポイント
- 3.1.不良品削減に向けた取り組み
- 3.2.データ分析で見える課題解決
- 3.3.デジタル化とIoTの活用
- 4.品質管理を成功させる体制
- 4.1.社内教育の重要性
- 4.2.チームでの品質管理促進
- 4.3.推進するためのシステム導入
- 5.品質管理の導入事例
- 6.まとめ
品質管理とは
品質管理(QualityControl)は、顧客の要求を満たすように、“製品の品質を維持・向上させる”活動です。
工場における品質管理の重要性
工場では、生産効率を高めつつ、均一な品質を維持することが不可欠です。わずか一つの不良でも、クレーム対応や回収に伴うコストが増大し、ブランドの信頼が損なわれる可能性があります。
リコールは、業種にかかわらず起こるものです。実際、国土交通省資料『令和6年度におけるリコール総届出件数及び総対象台数について(速報値)』では、2024年に対象となった国産車約700万台に対して、167件のリコールがありました。
▼自動車リコール届出件数

引用:国土交通省資料『令和6年度におけるリコール総届出件数及び総対象台数について(速報値)』
日本国内の人手不足もあり、品質管理を熟練者の経験に依存する体制では、リスクが大きくなります。品質管理は現場の課題にとどまらず、仕組み化・システム化を通じて全社で取り組む必要のある課題です。
出典:国土交通省資料『令和6年度におけるリコール総届出件数及び総対象台数について(速報値)』
品質管理(QC)と品質保証(QA)の違い
品質管理(QC)に似た概念として、品質保証(QA)があります。両者の違いを、次にまとめました。
▼品質管理と品質保証の違い
ポイント | 品質管理(QC) | 品質保証(QA) |
定義 | 生産工程内で不良を発生させないための管理活動 | 顧客に対して製品やサービスの品質を保証する仕組み |
主な目的 | 工程の安定化、不良削減 | 外部に対する品質保証、信頼の獲得 |
手法・活動 | 統計的手法、5S、PDCAなど | ISO認証、マニュアル整備、QMS運用、顧客対応 |
主体 | 現場主導 | 経営層や品質保証部門 |
役割関係 | 内部の品質を強化 | 外部への信用を確立 |
QCは、生産工程内で不良を出さないための取り組みです。一方、QAは顧客を対象として、製品やサービスの品質保証を提供します。QCとQAは、同時に実施することで、品質管理体制をより強固にするものです。
工場で押さえる品質管理の基本
品質管理を成功させるには、次の3つの手法が効果的です。
工程管理
工程管理は、生産計画に基づき、製造工程の進行を計画的・効率的に管理する仕組みです。原材料の投入から完成品の出荷までの流れを見える化し、段取りを整えます。作業のムリやムダをなくし、生産効率と品質を両立させるのが目的です。
5S管理手法
5Sは、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの5要素から、品質にアプローチする方法です。単なる職場美化ではなく、ムダを排除して品質不良の芽を摘むため、品質管理上でも有効に機能します。
PDCAサイクル
PDCAサイクルは、品質管理の継続的改善に欠かせない取り組みです。次の4項目を順番に行うことで、組織内にノウハウ・学習効果が蓄積されます。
Plan(計画)
Do(実行)
Check(評価)
Act(改善)
計画を立てて実行し、結果を評価して改善するという流れを続けることで、品質向上や効率化を実現可能です。
失敗しない品質管理の具体的施策とポイント
品質管理を実行する際は、以下の施策に取り組むことを推奨します。
不良品削減に向けた取り組み
不良品の発生は、コスト増加だけでなく、顧客からの信頼を損なうリスクもあります。不良の発生要因を突き止めて、根本から改善する取り組みが必要です。代表的な方法としては、以下が挙げられます。
▼不良品の削減方法
なぜなぜ分析
特性要因図(フィッシュボーンチャート)
QC工程表の作成
標準作業書の整備
AI画像検査システムの導入
分析を行ったり、作業工程を明確化したりすることで、再発を防止できます。
データ分析で見える課題解決
品質管理は主観に頼らず、データに基づく判断が重要です。センサーやIoTデバイスで収集した現場データを分析することで、設備異常の予兆や不良率の変動を早期に察知できます。
デジタル化とIoTの活用
近年の品質管理では、IoTやAIを活用したデジタル化に注目が集まっています。設備や機械の状態をリアルタイムで監視し、異常を早期に検知するため、現場の負担軽減と品質安定化が実現可能です。
さらに、クラウドシステムを導入すれば、工場内外の関係者が同じデータを参照できます。
品質管理を成功させる体制
品質管理を成功させるためには、次のような体制が不可欠です。
社内教育の重要性
品質管理の水準を維持・向上させるには、従業員一人ひとりが品質意識を持つ必要があります。そのため、多くの企業では 品質管理システム(QMS) の一環として、定期的な教育や研修を実施しています。
例えば、国際的な品質管理規格である『ISO9001』では、従業員が必要な力量を備えるための教育や訓練の実施が求められています。内部監査員の養成講座や品質管理に関する研修を定期的に設けることが、有効な品質管理体制の基盤となります。
チームでの品質管理促進
品質管理には、チーム単位での仕組みづくりが欠かせません。“QCサークル活動”のように、現場の小集団が課題を共有し、自発的に改善提案を行うことが、品質の向上につながります。
また、TQM(全社的品質管理)の考え方を取り入れることも大切です。TQMは、製造現場だけでなく管理層・経営層などのすべての部門において品質管理を行う手法です。日本品質管理学会では、TQMを以下のように定義しています。
品質/質を中核に,顧客及び社会のニーズを満たす製品・サービスの提供と,働く人々の満足を通した組織の長期的な成功を目的とし,プロセス及びシステムの維持向上,改善及び革新を全部門・全階層の参加を得て様々な手法を駆使して行うことで,経営環境の変化に適した効果的かつ効率的な組織運営を実現する活動
引用:日本品質管理学会『TQMの指針』
出典:日本品質管理学会『TQMの指針』
推進するためのシステム導入
品質管理を効率化するには、システムの導入が欠かせません。QMSを導入することで、検査データを一元管理し、不良分析を自動化できます。人為的なミスを削減できるため、トレーサビリティの確保も可能です。
さらに、MES(製造実行システム)やERP(統合基幹業務システム)と連携させることで、生産計画から品質保証までの情報を統合できます。長期的には、不良率低下や業務効率化により、品質向上とコスト削減の両立も可能です。
品質管理の導入事例
エフ・エー・アネックスの実績から、最新のAI活用事例をご紹介します。
匠の技と感性を再現したAI官能検査
人間の熟練検査員が持つ官能検査能力をAIで再現した事例です。従来は熟練者の経験や感覚に依存していた検査工程を、AIに置き換えました。人手不足の解消と、安定した検査精度の維持が可能となります。
熟練者の勘や経験に依存せず、安定した検査精度を実現できるため、さまざまな業界で導入が進んでいます。
詳しくは、こちらのページをご覧ください。
まとめ
本記事では、工場の品質管理について、以下の項目を解説しました。
品質管理とは
工場で押さえる品質管理の基本
失敗しない品質管理の具体的施策とポイント
品質管理を成功させる体制
品質管理導入事例
品質管理は、企業全体の競争力を左右するものです。工程管理・5S・PDCAといった基本に加え、不良品削減やデータ分析、AIやIoTによるデジタル化を取り入れることで、失敗しない品質管理体制を築くことができます。
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