ポカヨケ対策でミスを防ぐ!仕組みづくりと生産性向上のポイント

製造現場での品質管理や安全性向上には、“ポカヨケ対策”が欠かせません。人は必ずミスをするという前提に立ち、仕組みでエラーを防ぐことが重要です。
本記事では、ポカヨケの基本概念や、有効な仕組み・装置について解説します。ポカヨケ対策の効果を引き出す教育・訓練方法も掲載したので、ミスの防止施策や教育にお役立てください。
目次[非表示]
- 1.ポカヨケ対策(フールプルーフ)とは
- 2.ポカヨケとポカミスの違い
- 3.ポカヨケの仕組み・装置
- 3.1.ポカヨケ仕組み・装置の仕組み
- 3.2.ポカヨケ仕組み・装置の種類
- 4.教育と訓練の重要性
- 4.1.従業員向けのポカミス対策教育
- 4.2.現場での訓練
- 4.3.教育資料と動画の活用
- 5.ポカヨケ対策で生産性を向上
- 5.1.作業環境の安全性向上
- 5.2.ポカヨケによる作業効率改善
- 6.まとめ
ポカヨケ対策(フールプルーフ)とは
ポカヨケとは、作業現場におけるヒューマンエラーを防ぐための仕組みや工夫です。日本の製造業、特にトヨタ生産方式において活用された考え方であり、現在では世界中の製造現場で採用されています。
ポカヨケの前提は、“人間は必ずミスをする”ことです。ミスが重大な問題に発展しないように、仕組みで防止します。人に過度な注意力や完璧さを求めるのではなく、構造や機械設計、センサなどを活用して、そもそも間違えられない状態をつくることが重要です。
例えば、以下の取り組みはすべてポカヨケに該当します。
▼仕組み・装置ごとのポカヨケ対策の例
仕組み・装置 | 内容 | 効果 |
形状設計 | 部品が決まった方向にしか組み込めないように設計 | 組み付けミスの防止 |
カウントセンサ | 規定数の部品が揃わないと工程が進めない仕組み | 部品の付け忘れ防止 |
画像検査システム | 異物混入や欠陥を自動検知 | 異物混入・欠陥の早期発見、品質安定化 |
ポカヨケとポカミスの違い
ポカヨケとポカミスの違いは、次のとおりです。
▼ポカヨケとポカミスの違い
項目 | ポカミス | ポカヨケ |
定義 | 作業者の不注意や思い込みによって発生するヒューマンエラーそのもの | ヒューマンエラーを未然に防ぐための仕組みや工夫 |
具体例 |
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|
ポカミスとは、作業者の不注意や思い込みによって発生するミスそのものを指します。一方、ポカヨケはヒューマンエラーを仕組みによって防止する取り組みです。ポカヨケは、品質改善とコスト削減に直結する有効な対策となります。
ポカヨケの仕組み・装置
ポカヨケを実現するには、仕組みと装置の両方が必要です。それぞれ、下記で詳しく解説します。
ポカヨケ仕組み・装置の仕組み
ポカヨケの仕組みは、次の3つで成り立ちます。
▼ポカヨケの仕組み
異常を検知する
工程を止める
間違えられない設計にする
例えば、部品の不足を検知するセンサを設置すれば、組み込みミスによる不良品を防止できます。また、作業順序を強制する治具を活用することで、誤った手順での組み立ても回避可能です。
近年ではAIやIoTを活用して、リアルタイムで異常を検知・警告する仕組みも普及しているため、さらなる不良の抑制が期待できます。
ポカヨケ仕組み・装置の種類
ポカヨケの仕組み・装置の一例を、以下にまとめました。
▼ポカヨケ対策の装置一覧
種類 | 特徴 | 具体例 |
検知型 | 光センサや重量センサを用いて部品の有無・数量を確認。不足や誤投入を即座に検知。 | 部品不足検知センサ、重量検知システム |
制御型 | 条件が揃わないと工程が進まない仕組み。誤操作を未然に防ぐ。 | 部品が揃わないと工程が進まない装置、装置の安全スイッチ |
形状設計型 | 物理的に誤操作できない設計でミスを防止。 | USB端子、プリンターのカートリッジ装着 |
デジタル・AI型 | カメラやAI解析で不良品や欠陥を自動検出。人の目に頼らず高精度な品質保証が可能。 | AI画像検査システム、ディープラーニングを活用した外観検査 |
ポカヨケ装置の選定は、コストと効果のバランスが重要です。業務によって必要な対策内容・精度を確認し、必要十分な装置を選定すると、コストのムダを抑えられます。
教育と訓練の重要性
ポカヨケの仕組み・装置を運用するには、従業員に次のような教育・訓練を施す必要があります。
従業員向けのポカミス対策教育
従業員向けのポカミス対策教育は、品質管理を支える基盤です。ヒューマンエラーは誰もが起こし得るものであるため、仕組みで防止する文化の普及が重要になります。
教育の際は、次の内容を体系的に伝えることが有効です。
▼ポカミス対策の教育内容
ポカヨケの基本概念
現場での具体事例
不良発生時のコスト影響
定期的な安全教育の実施は、『労働安全衛生法』第59条に基づいて、事業者に義務付けられています。
▼労働安全衛生法 第59条
(安全衛生教育)
第五十九条 事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。
2 前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。
3 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。
引用:e-gov法令検索『労働安全衛生法』
安全教育の枠組みは、ポカヨケ教育にも応用することが可能です。
出典:e-gov法令検索『労働安全衛生法』
現場での訓練
教育で知識を得たあとは、実際の現場での実地訓練によって、理解を深めるのが効果的です。
さらに、QCサークル活動のような小集団による改善活動を組み合わせると、従業員が自ら課題を見つけ、ポカヨケ施策を提案できる雰囲気を作れます。従業員が、能動的に参加する品質文化が定着し、組織全体の品質レベル向上が可能です。
教育資料と動画の活用
近年では、教育コンテンツを動画やeラーニングで提供する企業もあります。特に、新入社員や派遣スタッフなどの入れ替わりが多い現場では、動画やeラーニングが有効です。標準化された教材を活用することで教育の質を均一化でき、短期間で必要な知識を習得できます。
さらに、実際の工程を映像で確認できる教材を用意すれば、作業に対する理解度向上が可能です。マニュアルやチェックリストをデジタル化して、タブレットで参照できるようにすれば、教育と実務を連動させることができます。
ポカヨケ対策で生産性を向上
ポカヨケを導入すると、品質向上や不良品の抑制以外にも、作業環境の安全性向上や作業効率改善の効果が得られます。
作業環境の安全性向上
ポカヨケには、作業環境の安全性を高める効果もあります。
▼ポカヨケ対策の種類と効果
ポカヨケの種類 | 具体例 | 安全効果 |
両手操作方式 | プレス機の両手ボタンを同時に押さなければ作動しない仕組み | 作業者の手の巻き込み防止 |
インターロック方式 | ガード扉が開いている間は機械が動作しない | 危険域への進入防止 |
エリアセンサ方式 | 光線式・レーザー式安全装置で危険域への侵入を検知し機械を停止 | 危険エリアでの事故防止 |
厚生労働省『機械による労働災害防止対策を強化するため 労働安全衛生規則を改正しました』『機械安全規格を活用して災害防止を 進めるためのガイドブック』を基に作成
厚生労働省の分析では、労働災害の”約8割”に不安全行動(ヒューマンエラー)が含まれるとされています。安全装置をはじめとする装置を導入して、従業員の安全を守るのが重要です。加えて、職場への定着やモチベーション維持も期待できます。
出典:厚生労働省『機械による労働災害防止対策を強化するため 労働安全衛生規則を改正しました』『機械安全規格を活用して災害防止を 進めるためのガイドブック』
ポカヨケによる作業効率改善
ポカヨケの導入により、作業効率の向上も可能です。作業者の負担を軽減し、ミスの未然検知によって手戻りや再検査を抑制するため、結果的に所要時間が減ります。
さらに、画像検査やAI 外観検査を適用すると、判定のばらつきを抑えて、検査を安定運用できます。製品切替時も、切替時間の短縮が可能です。
まとめ
本記事では、ポカヨケ対策について、次の内容を解説しました。
ポカヨケ対策(フールプルーフ)とは
ポカヨケとポカミスの違い
ポカヨケを実現する仕組み・装置
教育と訓練の重要性
ポカヨケ導入による効果
ポカヨケは、“人は必ずミスをする”という前提で、製造現場におけるヒューマンエラーを防ぐ取り組みです。ミスを未然に防止し、安全性と品質を高めることで、結果的に生産性向上へとつながります。さらに、教育や訓練と組み合わせることで、現場全体に品質意識を根付かせる事も可能です。
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