工場の省人化が注目される理由とは。具体的な手段とポイントを解説

製造業が直面する深刻な問題の一つに人手不足が挙げられます。
工場が安定した生産体制を維持していくための手段として、現場の業務や製造プロセスの省人化が注目されています。
生産管理の担当者のなかには「工場の省人化がなぜ求められているのか」「どのように省人化を進めるとよいのか」など疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
この記事では、工場における省人化の概要や求められる理由、省人化を推進するステップ、取り組みのポイントなどを解説します。
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工場における省人化とは
工場の省人化とは、現在の作業量をより少ない人員でこなせるようにする取り組みです。省人化の目的は、単なる人員の削減ではなく、より効率的な生産体制によって工場の生産性を向上させることです。
省人化と混同されやすい施策に“少人化”や“省力化”などがありますが、目的に違いがあります。
▼省人化と混同されやすい施策との違い
施策 | 目的 |
省人化 | 人的作業の自動化や人員の最適配置による生産性の向上 |
省力化 | 作業負担の軽減や作業時間の短縮 |
少人化 | 現場の業務負荷や繫閑状況に応じた人的リソースの投入 |
工場の生産ラインや業務のプロセスにおいて省人化を図ることで、削減した人員をより高付加価値な業務にシフトさせ、工場全体の生産性向上につなげられます。
工場の省人化が求められる理由
工場の省人化が求められる理由には、以下が挙げられます。
▼工場の省人化が求められる理由
- 人手不足の深刻化
- 従業員の労働生産性向上
- 働き方改革への対応
経済産業省の『2025年版ものづくり白書』によると、2002年から2012年にかけて製造業の就業者数は継続的に減少しており、その後は横ばいの状況です。限られた人員で生産体制を維持するには、業務や製造プロセスの省人化が求められます。
また、工場の省人化は、従業員の業務負荷を低減して長時間労働を防ぐことにもつながります。従業員の労働生産性を高めて働きやすい労働環境を目指すうえでも、省人化に取り組むことが重要です。
出典:経済産業省『2025年版ものづくり白書』
工場を省人化するステップ
工場における省人化を成功させるためには、現在の課題を明らかにしたうえで計画的かつ段階的なアプローチで自動化・効率化に取り組むことが重要です。
▼ステップ
- 製造工程の全体を可視化する
- 現状の課題を洗い出す
- 自動化・効率化できる業務や製造工程を検討する
- 自動化・効率化の手段を決定する
①製造工程の全体を可視化する
省人化の第一歩は、製造工程の全体を可視化することです。
製造工程を洗い出して、各工程の業務内容を細分化して整理します。生産ラインの進行フローや各部門とのやり取りなどを明確にすることで、全体像を把握しやすくなります。
また、この段階で「各業務の作業はどのような方法で行っているか」「情報共有や連携をどのように行っているか」などをチェックします。
②現状の課題を洗い出す
製造工程の全体像を可視化できたあとは、人手不足や生産効率の低下を招いている現状課題を特定します。
▼課題の例
- 属人化している業務がある
- ミスの発生が多い工程がある
- 進捗管理や部材管理がアナログで行われている など
業務の属人化は、特定の従業員に対応が依存してしまい、効率化の妨げとなります。また、ミスが多い工程は、修正作業や手戻りの発生によって業務負荷の増加につながります。
さらに、紙ベースで業務や情報共有を行っている場合には、記入・転記作業に時間を要したり、関連部門とのやり取りが増加したりする問題を招きます。
③自動化・効率化できる業務や製造工程を検討する
現状課題を解決するために、自動化・効率化できる業務や製造工程を検討します。
繰り返し頻度の高い工程、あるいはヒューマンエラーが発生しやすい作業に焦点を当てることが重要です。これらの作業やプロセスが、デジタル技術や機械導入によってどのように改善され得るかを深く掘り下げて検討します。
具体的な改善の可能性を洗い出し、それぞれの実現性や期待される効果を多角的に評価することで、手段の選定がスムーズに進みます。
④自動化・効率化の手段を決定する
自動化・効率化する業務や製造工程が確定したら、具体的な手段を検討します。
ロボット導入による定型作業や重労働の自動化、IoTを活用した設備監視やデータ収集、AIによる高度な分析や予測、RPAによる事務作業の効率化など、多岐にわたるソリューションが選択可能です。
同時に、自動化に伴う従業員のスキルアップや再配置計画も視野に入れる必要があります。
工場を省人化する具体的な手段
省人化を実現するための具体的な手段は、多岐にわたります。工場の特性や製品の種類に応じて、その時点で可能手段を選択することが重要です。
産業用ロボットの導入
産業用ロボットの導入により、これまで人が行っていた作業を機械に代替させることが可能です。
▼産業用ロボットの導入例
- プレス工程への協働ロボットの導入
- AMR(自律走行搬送ロボット)による部品供給の自動化 など
協働ロボットは、安全柵が不要で人との共同作業が可能になる産業用ロボットです。作業の一部を自動化することにより、生産ラインの省人化を図れます。
業務のデジタル化
業務のデジタル化により、省人化と生産性向上を同時に実現し、少ない人員で効率的な工場運営が可能になります。
▼業務のデジタル化における具体例
- 生産管理システムの導入
- 設備の稼働状態の監視と異常発生の検知
- IoT端末による品質検査とそのデータベース化 など
生産管理のシステム化、IoTによる設備データ取得、紙帳票のデジタル化など、従来の手作業をシステムに置き換えることで自動化と効率化を図ります。
デジタル化により膨大なデータの収集・解析が可能となり、新製品開発やビジネスモデル創出につながります。
工場の省人化に取り組む際のポイント
省人化は、単に設備を導入すればよいというものではありません。成功させるためには、いくつかの重要なポイントを考慮して戦略的に進める必要があります。
①スモールスタートで段階的に進める
工場の省人化は、まず限定された作業や工程から小規模で始めることがコツです。
ロボットやシステムの導入、運用にはコストがかかるため、投資対効果の慎重な検討が必要です。また、導入にかかる時間を確保するために製造スピードの一時的な低下も考えられるため、導入スケジュールの調整も求められます。
まずは、リスクを抑えたスモールスタートで効果を検証しながら徐々にその規模を拡大させることで、省人化がスムーズに推進できます。
②人材育成を同時に進める
ロボットやシステムの導入、運用にはITに関する一定の知識を持つ人材が不可欠ですが、育成には時間がかかるため計画的な取り組みが必要です。
省人化計画の初期段階で育成をスタートさせることで、システム稼働時に必要な人材を確保できます。従業員のスキルアップは、省人化による雇用不安の解消にも寄与します。
育成が間に合わないときは、外部の人材活用で短期的な技術支援と長期的な内製化を組み合わせることが効果的です。
工場の省人化を実現した事例
重長物搬送作業において安全性を確保しながら省人化を実現した事例です。
▼課題
出庫口における重量物の搬送において、人身事故を起こさずにスループットを向上させることが課題でした。
▼導入内容
オムロンが提供する『Fleet Manager』を導入しました。
▼導入後の効果
製造装置に始まる搬送プロセスを統合して工場全体の搬送ロボットを一括管理、効率よく連動する自動配送を実現しました。これにより、休憩や他の作業のために搬送の循環が途切れることを防止しています。
さらに、搬送ロボットにセーフティレーザスキャナを搭載し、人が急に近づいても自動で停止する仕組みを構築しました。
この事例について、詳しくはこちらのページをご覧ください。
まとめ
この記事では、工場の省人化について以下の内容を解説しました。
- 工場における省人化とは
- 工場の省人化が求められる理由
- 工場を省人化するステップ
- 工場を省人化する具体的な手段
- 工場における省人化のポイント
- 工場の省人化を実現した事例
工場の省人化は、人手不足の解決、人件費削減、働き方改革の実現など、製造業が直面する様々な課題を解決する重要な取り組みです。成功のためには、製造工程の可視化から始まり、課題を洗い出し、自動化・効率化の検討・決定まで、段階的なアプローチが不可欠です。
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