工場でのロボット導入時に行う安全対策とは。関連する規格と種類別のポイント

ロボットの安全対策は、作業者の命や健康を守るだけでなく、安定した生産活動を維持するためにも欠かせません。
この記事では、ロボット導入時に必要な安全対策の基本から、関連する法規や国際規格、ロボットの種類ごとのポイント、実際の導入プロセスまで解説します。
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ロボットの安全対策に関する規則と規格
ロボットの安全対策を行う上で、関連する法規や規格は必ず押さえましょう。
日本国内では『労働安全衛生法』や『労働安全衛生規則』がロボットの安全運用に関する基本的なルールを定めており、工場でのロボット稼働に適用されます。
また、国際的にはISO規格などがあり、グローバルな工場運営や輸出入を行う場合には、これらの遵守も必要です。
規則や規格を理解し、遵守することが、事故やトラブルを未然に防ぐ第一歩となります。
労働安全衛生規則
『労働安全衛生規則』第150条の4では、稼働中のロボットに作業者が接触する恐れがある場合、危険防止措置を講じることが義務付けられています。
▼労働安全衛生規則 第150条の4
(運転中の危険の防止)
第百五十条の四 事業者は、産業用ロボツトを運転する場合(教示等のために産業用ロボツトを運転する場合及び産業用ロボツトの運転中に次条に規定する作業を行わなければならない場合において産業用ロボツトを運転するときを除く。)において、当該産業用ロボツトに接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、さく又は囲いを設ける等当該危険を防止するために必要な措置を講じなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生規則』
具体的には、安全柵や囲いの設置、非常停止装置の設置、保護装置の導入などが求められます。これらを怠ると、重大な労働災害につながる恐れがあります。
定期的な点検やメンテナンスも規則で求められているため、運用開始後も継続的な体制を整えましょう。
引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生規則』
安全に関する国際規格
ロボットの安全対策には、国際的な規格の遵守も欠かせません。
代表的なものは、ISO 10218(産業用ロボットの安全要求事項)や、ISO/TS 15066(協働ロボットの安全要求事項)などです。
▼国際規格の種類と内容
規格名 | 内容 |
ISO 10218-1 | 産業用ロボット本体の安全要求事項 |
ISO 10218-2 | 産業用ロボットシステムと統合に関する安全要求事項 |
ISO/TS 15066 | 協働ロボットの安全要求事項 |
ISO 3691-4 | 自動搬送車(AGV/AMR)の安全要求事項 |
これらの規格は、リスクアセスメントの実施や安全設計、保護装置の選定、作業者との協働時の安全確保など、より詳細なガイドラインを提供しています。
国際規格に準拠することで、より高い安全性と信頼性を確保でき、グローバル展開や海外製ロボット導入時にも適切な対応が可能となります。
工場で使用されるロボットの種類と安全対策
工場で使われるロボットは、大きく産業用ロボット、協働ロボット、搬送ロボットに分けられます。
ロボットの種類によって、用途や動作範囲、作業者との関わり方が異なるため、必要な安全対策も変わってきます。
産業用ロボット
産業用ロボットは、自動車や電子部品の組立、溶接、塗装など、繰り返し作業や危険作業を自動化するために広く使われています。
これらのロボットは、特性上高出力・高速で動作する設計です。作業者が誤って可動範囲に入ると、重大な事故につながるリスクがあります。
▼取り組み例
安全柵や囲いの設置、インターロック付扉の活用
非常停止装置、ライトカーテン、セーフティレーザスキャナなどの保護装置導入
定期点検やメンテナンスの実施、安全教育の徹底
リスクアセスメントに基づく安全設計やISO 13849-1準拠の制御システム採用
また、定期的な点検やメンテナンス、作業者への安全教育も重要な対策となります。
これらの対策を徹底することで、産業用ロボットによる労働災害の防止につながります。
協働ロボット
協働ロボットは、人と同じ作業空間で協力しながら作業を行うことを前提に設計されています。
そのため、従来の産業用ロボットのような物理的な隔離が難しい場合が多く、接触時の安全性を確保するための機能が必要です。
▼安全性を確保する機能例
力・速度の制限
衝突検知機能
緊急停止機能
侵入検知センサ
また、ISO/TS 15066などの国際規格に基づいたリスクアセスメントを実施し、作業環境や作業内容に応じた安全対策を講じることが重要です。
協働ロボットは柔軟な運用が可能ですが、安全性を最優先に考えた運用が欠かせません。
搬送ロボット
搬送ロボットは、工場内で部品や製品を自動で運搬する役割を担っています。
これらのロボットは、人や他の機械と同じ通路を移動することが多いため、事故を防ぐための安全対策が重要です。
▼対策例
障害物検知センサ
セーフティレーザスキャナの搭載
警告灯・アラームの設置
走行ルートの明確化
標識・フロアマーキング
搬送ロボットの安全対策は、現場のレイアウトや運用方法に合わせて、柔軟に設計することが求められます。
ロボットの安全対策を導入するプロセス
ロボットの安全対策は、単に装置を設置するだけでなく、計画的なプロセスに基づいて導入することが重要です。
各プロセスのポイントを解説します。
①リスクアセスメントの実施
リスクアセスメントは、ロボット導入時の安全対策の第一歩です。
現場の作業環境やロボットの動作範囲、作業者との接触リスクなどを洗い出し、どのような危険があるかを評価します。この評価に基づき、優先的に対策したほうがよいリスクを明確にしましょう。
リスクアセスメントは、国際規格(ISO 12100など)でも推奨されており、定期的な見直しも重要です。
現場ごとに異なるリスクを的確に把握し、最適な安全対策を計画しましょう。
②リスクを低減する措置の検討と実行
リスクアセスメントで特定した危険に対して、具体的な低減措置を検討・実行します。
例えば、以下のような措置が挙げられます。
安全柵・保護装置の設置
動作速度・力の制限
非常停止装置の導入
作業手順・運用ルールの見直し
作業手順の見直しや、作業者がロボットの可動範囲に入らないような運用ルールの策定も必要です。
これらの措置は、現場の状況やロボットの種類に応じて最適なものを選択し、確実な実施が求められます。実施後は、効果の検証や必要に応じて、改善を行いましょう。
③安全教育とマニュアル整備
ロボットの安全対策を確実に機能させるためには、作業者への安全教育とマニュアルの整備が不可欠です。
作業者がロボットの危険性や安全装置の使い方、緊急時の対応方法を正しく理解していなければ、設備が整っていても事故は防げません。
定期的な安全教育の実施や、マニュアルの作成・配布を徹底しましょう。
また、新しいロボットの導入時や作業内容の変更時には、必ず教育とマニュアルの更新が必要です。
まとめ
この記事では、ロボット導入に伴う安全対策について以下の内容を解説しました。
ロボットの安全対策に関する規則と規格
工場で使用されるロボットの種類と安全対策
ロボットの安全対策を導入するプロセス
工場でロボットを安全に運用するためには、法規や規格の遵守、ロボットの種類ごとの適切な安全対策、計画的な導入プロセスが不可欠です。
リスクアセスメントから始まり、具体的な低減措置、作業者教育まで一貫して取り組みましょう。事故を未然に防ぎ、安心してロボットを活用できる環境を整えることで、初めて安全にロボットを運用できます。
安全対策は一度きりではなく、継続的な見直しと改善が重要です。現場の状況や技術の進化に合わせて、最適な安全対策を実践してください。
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