機械安全の基本を解説。リスクアセスメントと安全化方策とは

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製造現場では、機械の誤操作や不具合による事故・災害のリスクが常に存在します。

作業者の安全を守り、生産を安定させるためには、機械安全の基本を理解し、適切な対策を講じることが欠かせません。

この記事では、機械安全の考え方やリスクアセスメントのプロセス、機械を安全に使用するための方法などを解説します。

目次[非表示]

  1. 1.機械安全とは
  2. 2.リスクアセスメントのプロセス
    1. 2.1.①機械類の制限の決定
    2. 2.2.②危険源の同定
    3. 2.3.③リスク見積り
    4. 2.4.④リスク評価
  3. 3.機械の安全化を図るための3つの方法
    1. 3.1.本質的安全設計による危険源の除去
    2. 3.2.安全防護と付加保護の活用
    3. 3.3.使用上の情報提供と教育
  4. 4.機械安全を実現する具体策の例
    1. 4.1.機械の定期的なメンテナンス
    2. 4.2.作業手順書の作成
    3. 4.3.安全機器の活用
  5. 5.まとめ

機械安全とは

機械安全とは、機械を使用する際に発生しうる危険を最小限に抑え、作業者や周囲の人々の安全を確保するための考え方や取り組みです。

「人は間違える、機械は故障する」という前提で、設計段階から安全性を高めます。

具体的には、危険源の除去や安全装置の設置、適切な情報提供などを通じて、受け入れ不可能なリスクを排除することが求められます。

また、国際規格ISO 12100などの基準に基づき、体系的な安全対策が進められています。

リスクアセスメントのプロセス

リスクアセスメントは、機械安全を確保するための中心的なプロセスです。これは、機械の使用に伴うリスクを体系的に洗い出し、評価し、必要な対策を講じる一連の流れを指します。

主なステップは、次の4段階です。

  1. 機械類の制限の決定

  2. 危険源の同定

  3. リスク見積り

  4. リスク評価

プロセスを通じて、現場ごとに最適な安全対策を選択し、事故や災害の発生を未然に防ぐことができます。

①機械類の制限の決定

リスクアセスメントの第一段階は、対象となる機械の使用条件や制約を明確にすることです。

使用目的や稼働範囲、設置環境、操作方法などを整理することで、発生し得るリスクを具体的に把握できます。

例えば、屋内外の設置場所や、作業者の熟練度、使用頻度なども考慮する必要があります。

この段階で機械の制限を正確に設定することで、後のリスク評価や対策をより精度高く進めることが可能になります。

②危険源の同定

次のステップは、機械のどの部分や動作が危険をもたらすかを特定することです。

▼危険源の例

  • 可動部の挟まれ・巻き込まれ

  • 感電・漏電

  • 高温・低温によるやけど

  • 化学物質の漏洩 など

現場でのヒヤリ・ハット事例や過去の事故データも参考にしながら、あらゆるリスク要因をリストアップすることが重要です。

この作業を丁寧に行うことで、後工程での安全対策の見落としを防ぐことができます。

③リスク見積り

危険源を特定した後は、それぞれのリスクがどの程度の被害をもたらすか、発生頻度や重篤度の観点から評価します。

リスク見積りでは、事故が発生した際の影響の大きさや発生可能性を数値やランクで表し、比較できる形に整理します。

この評価を基に、どのリスクから優先的に対策を講じるかの判断が可能です。

▼リスク要因と危険度

リスク要因

発生頻度

重篤度

挟まれ

重大

感電

重大

やけど

リスクの見積りを行う際は、客観的なデータや現場の実態を反映させ、主観に偏らない客観性を確保しましょう。

④リスク評価

リスク見積りの結果をもとに、各リスクが許容範囲かどうかを判断します。許容できないリスクについては、追加の安全対策が必要です。

この評価は、企業の安全方針や、関連する法令、業界基準なども考慮して行われます。

リスク評価は一度きりではなく、定期的に見直しましょう。現場の変化や、新たな危険源にも柔軟に対応できます。

機械の安全化を図るための3つの方法

機械の安全化を実現するためには、リスクアセスメントの結果をもとに、具体的な安全方策を講じることが不可欠です。対策方法としては3つ挙げられます。

本質的安全設計による危険源の除去

本質的安全設計とは、機械自体の設計段階で危険源を根本的に除去、または最小化する方法です。

▼具体的な方法

  • 可動部のカバー設置

  • 自動化による人の介入削減

  • 不要なエネルギーの排除

このアプローチは、後付けの安全装置に頼らず、機械そのものが安全であることを目指すものです。

設計段階から安全性を考慮することで、長期的な安全確保とコスト削減にもつながります。

安全防護と付加保護の活用

本質的安全設計だけでは対応しきれないリスクに対しては、安全防護や付加保護を活用します。

▼代表的な例

  • 安全カバーの設置

  • インターロック装置の導入

  • 非常停止ボタンの設置

これらの装置は、危険源に直接触れないようにしたり、異常時に機械を即時停止させるなど、作業者を守る役割を果たします。

加えて、定期的な点検やメンテナンスを行い、安全機能が常に正常に働くように保つことも重要です。

使用上の情報提供と教育

機械の安全を確保するためには、作業者への情報提供と教育が不可欠です。

▼具体的な取り組み例

  • 取扱説明書の配布

  • 安全教育の実施

  • 現場での情報共有

  • 安全ピクトグラムの活用

また、ヒヤリ・ハット事例の共有や、現場でのコミュニケーションも重要です。

機械の正しい使い方や緊急時の対応方法を全員が理解することが、事故防止につながります。

機械安全を実現する具体策の例

現場で機械安全を実現するための具体的な取り組み例を3つ紹介します。これらの対策は、リスクアセスメントや安全方策の実践をより効果的にするために役立ちます。

現場の状況や機械の種類に応じて、最適な方法を選択し、継続的な改善を図ることが大切です。

機械の定期的なメンテナンス

機械の安全性を維持するためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。

摩耗や劣化による故障や不具合は、重大な事故につながるリスクがあります。点検項目やスケジュールを記録に残すことで、トラブルの早期発見と予防が可能です。

また、作業者に基本的なメンテナンス知識を教育することで、日常点検の精度が高まり、安全な運用体制を維持できます。

作業手順書の作成

作業の安全性を高めるためには、標準化された作業手順書の作成が有効です。

手順書には、作業の流れや注意点、緊急時の対応方法などを明記し、誰でも同じ品質と安全水準で作業できるようにします。

また、手順書は定期的に見直し、現場の実態や新たなリスクに対応できるように更新する必要があります。

作業者への周知徹底を行い、手順書を活用した訓練を行うことで、現場全体の安全意識の向上につながります。

安全機器の活用

安全機器の導入は、機械安全を高めるための効果的な手段です。

例えば、安全センサや安全スイッチ、ガードリレーなどの機器は、危険な動作を自動的に検知し、機械を停止させることができます。

▼安全機器の例

安全機器の種類

主な機能

安全センサ

人や物の侵入を検知し機械を停止

安全スイッチ

カバーの開閉で機械を制御

ガードリレー

安全回路の監視と制御

これらの機器は、作業者の不注意や予期せぬトラブルを検知し、自動的に機械を停止させることで事故防止に大きく貢献します。

導入後は、定期的な点検とメンテナンスを行い、機能する状態を維持しましょう。

まとめ

この記事では、機械安全の基本について以下の内容を解説しました。

  • 機械安全とは

  • リスクアセスメントのプロセス

  • 機械の安全化を図るための3つの方策

  • 機械安全を実現する具体策の例

機械安全は、設計段階から現場での運用、教育・訓練まで、総合的な取り組みが不可欠です。

リスクアセスメントを通じて危険源を特定し、「本質的安全設計」「安全防護と付加保護」「情報提供と教育」という3つの方策を適切に組み合わせることで、安全性を高められます。

さらに、定期的なメンテナンスや作業手順書の整備、安全機器の活用など、日々の取り組みも重要です。継続的な改善と全員参加の意識を持ち、安心して働ける職場環境を実現しましょう。

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